3月

 

 

 

30(金)   この世界の片隅に

 

 

 

 先日、近所のショッピングモール内にあるシネコンの前でタイムスケジュールの一覧をぼんやりながめていた。ロードショウの映画や、子供向けアニメ作品のなかに「この世界の片隅に」を見つけた。1日に1回の上映。この映画はたしか2016年の封切りだったから、かなりのロングランだ。

 ぼくが「この世界の片隅に」を見たのは去年の夏のこと。レンタル店でDVDを借りたのだ。とても心を打たれた映画だった。次の日曜日、ぼくはHMVに出かけ「この世界の片隅に」のDVDソフトを買い、さらにその翌週、大型書店で広島市と呉市の地図を購入した。すずさんが嫁いだ北條家がどの辺にあるのか確かめようと思ったから。映画の舞台になった場所を知るために地図を買うなんてはじめてのことだ。そうさせるだけの影響をぼくはこの映画から受けたのだ。

「この世界の片隅に」は戦時下の人びとの生活をていねいに描いている。声高に反戦を叫ぶわけではないけど、戦争がいかに多くのかけがえのないものを奪っていくかを教えてくれる。「泣いてばかりいたら塩分がもったいない」という隣組のおばさん(夫と息子を戦争で失った)のタフなセリフ、すごいです。

 エンドロール時の裁縫の様子が楽しい。長い髪を束ねたすずさんもいいけど、彼女はショートカットのほうが似合うと思う。

 

 

 

19(月)   しらたきを食べる時のサディスティックな感情について

 

 

 

 今年の冬はよくおでんを食べた。仕事からの帰り、近所のコンビニに立ち寄ってセルフでおでんを選び、うちに持ち帰った。

 しらたきを食べるとき結び目にかぶりつくと、しらたきがバラバラとほどけて汁の中に水没する。ぼくはその感触が好きで必ず結び目に歯を立てた。行儀のわるい犬食いの姿勢で顔をプラスティック容器に近づけ、わざと勢いよく噛みちぎる。くちびるのはしから短いしらたきを垂らしながら、ぼくは上目づかいで声を立てずにほくそ笑むのが常だった。

 うまく説明できないけどしらたきがほどけるときに、サディスティックな暗い悦びがぼくの中を駆けめぐるのだ。この感情は一体なんなのでしょう?