9月
30(日) ネコとオレ、ご主人様とM嬢。
ぼくはイヌとネコ、どっちも好きです。どっちか選んで、と言われたらネコかな~。ほんのちょっとの差なんですが。
ネコは気まぐれ、容易に体を撫でさせてはくれない。ネコにさわることが出来ない時期か長くなると、無意識にニャンコを探してしまう。なんて言うか、体の中で何かが欠乏している状態なんですな。
ネコもわかっているみたいで、"さわらせてオーラ" を放っている人のそばに寄ってきたりしない。基本的に意地悪なのだネコは。そこが好きなのだオレは。
知らん顔してたネコが不意にこっちに歩いてきて足元にすり寄ったりすると不覚にもおれの心は震える。大げさに言うと、ネコに何かを赦してもらった感覚です。
この構図はぼくが先週レンタルしたSM、調教ものアダルトDVDとまったく同じだな。赦すご主人様と、赦されるマゾのお嬢さん。赦すネコと、赦されるオレ。それにしてもなんでおれがノラ猫なんぞに赦されなくちゃならんのだ。
返却期限は今日まで。台風が来る前にDVD返さなきゃ。
27(木) あせも
あせもができた。背中や腕に細かいブツブツが広がって痛がゆい。何か恐ろしい伝染病にでもかかったかと思い症状を説明したら、「それはあせもだね」と会社の人にあっさり言われた。な~んだ、あせもか。
薬局でベビーパウダーを買った。パフは別売りだった。
うちに帰ってシャツを脱ぎ、「もう40代後半ですけど、"ベビー" パウダー使わせてもらいます」などと少々ヒクツな感じでパフにベビーパウダーをつけ、体にはたいてみた。フライにされる直前の、衣をまぶされているアジの開きになった気分。
上半身におしろいを塗りたくった風でなんだか前衛芸術の舞踏家みたい。こどものころはともかく、大人になってベビーパウダーを使うのはあんまりサマにならないみたいだ。
それにしてももうすっかり秋の気配なのに、時期的にズレてないか、おれのあせも。
22(土) うなぎについて
ぼくは以前からうなぎという生き物に対して強い興味を持っている。うなぎは僕らにとって身近な存在だけど、長い間その生態の多くは謎に包まれていた。けどここ20年ほどでその謎は劇的に解明されてきた。
うなぎはどこで卵を産むのか?人間はつい最近までうなぎの産卵場所を特定出来なかった。が、日本うなぎに関してはわかっている。西マリアナ海嶺の南端、地図でいうとフィリピンとグアム島の中間くらい。日本の調査隊がこの海域で天然うなぎの稚魚の採取に成功したのだ。2005年のことです。
うなぎってすごい。日本の川で暮らしていて、「産卵しに行こ」と半年かけて数千キロも太平洋を南下するのだ。一見ドン臭そうなうなぎだが、実はタフでワイルドなのだ。
うなぎは新月の夜に産卵する。暗闇に紛れて卵を外敵から守るため、新月の潮の早さを利用して卵を拡散させるためなどと言われている。
新月の夜、ぼくはうなぎについて考える。月のない暗い空の下、大海原の、ある海域でメスうなぎが卵を産み、オスがそれに精液をかける。うなぎたちが海中で漂う姿を頭に思い浮かべる時、ぼくの心のなかにある種の感情が湧きおこる。それは生き物に対するいとおしさなのだと思う。
16(日)
10年ごとに買う
ニンテンドーゲーム
ぼくはゲームをほとんどやらない。PCやモバイルのゲームに夢中になったことはないし、ゲームセンターにも行かない。十代の頃に遊んだブロック崩し、スペースインベーダー、ゼビウスあたりがぼくのささやかなゲーム遍歴である。人間味の乏しい、無機的なゲームが好きなのだ。
やってみたら案外楽しいのかもしれないな、ハマるといいなと淡い期待を込めてこれまでに2回、携帯ゲーム機を買ったことがある。
20年くらい前、初めて買ったゲーム機はゲームボーイだった。ソフトはドンキーコングを買った。ぼくはコツコツと地道にがんばったのだけど、このゲームをクリアすることが出来なかった。ジャングルのステージがどうしても攻略出来なかったのだ。何年もかかって結局ポリーンは救出できずじまいだった。
そして今から10年前、三十代の終わりに買ったのがやはりニンテンドーのゲームボーイアドバンスSPだ。この時いっしょに買ったのがロールプレイングゲームだった。タイトルは忘れた。たしか「なんとかキャラバン」と言うゲームだったと思う。RPGならおれの中で眠っているゲーマー魂を目覚めさせることが出来るかも知れないと考えたのだ。
ソフトをゲーム機にセットし、電源を入れる。荘厳なテーマ曲と共にタイトルが現れる。おおっ、カッコいいな。期待は高まる。RPGよ、オレを夢中にさせてくれ。
ぼくはある村の少年と言う役割を与えられてゲームをすすめて行く。もう細かい状況は忘れてしまったんだけど、どこかのヒミツの扉だかタンスの引き出しだかを開けると突然正体不明の発光体が現れ、ぼくに問いかける。「おぬし、冒険の旅にでかける覚悟はおありか?」とかそんな内容のセリフだ。ぼくはそういうのにあんまり興味がないので「いいえ」を選んだ。ナゾの発光体は消えてしまった。
発光体の問いに対して「はい」と答えなければゲームが始まらないと気がついたのはしばらく時間がたってからである。もう一度あの発光体を探し出し、問いかけに応じるとゲームはようやく本格的に動き出した。
その後、わけのわからない怪物とバトルしたり、仲間が増えたりでぼくはなんだか面倒臭くなってきた。バーチャルでもリアルな世界でも、ヒトの性格はそんなに変わらないのかもしれない。結局そのゲームは当時小学生だった甥っ子に譲ってしまった。このゲームもクリア出来なかった。
9(日) ナイキのロゴマーク、忍び寄る老いの影
朝、会社に向かって自転車をこいでいた。むこうから年配の男性がゴミ袋を持って歩いて来た。少し腰が曲がり、足元がおぼつかない。この人の着ているスウェットシャツの胸のあたりに黒いシミがついていた。マジックインキで線を引いたようなそのシミは、よく見るとナイキのマークだった。
歳を取るというのはなんとも切ないものですな、ナイキのウェアを着ていてもナイキだと思ってくれない。ナイキのロゴ、スウッシュかシミ、汚れに見えてしまうなんて。
だけど人のことをどうこう言っている場合じゃない。ぼくにも老いの影はもうそこまで忍び寄ってきているのだ。スウッシュを見間違えたのはもしかしたらぼくの目の衰えなのかも知れない。あれが老眼の前兆だったのかと後から思い返すのだろうか。